馬でつながる
ヒト・モノ・コト
FOREST
森林
三菱マテリアル株式会社
プロフェッショナルCoE
環境保全センター森林管理室
川合 英之さん
天然の森づくりにこそ、
馬搬の高いポテンシャルが発揮されます。
馬の様々な可能性も広げながら、
いい森づくりを実現していきたい。
西埜馬搬は2018年から早来の「マテリアルの森」で保全や整備を行なっています。
三菱マテリアル株式会社は全国に約14,000ヘクタールの広大な社有林を持つ森林管理のスペシャリスト。
社有林の8割をも占める道内9箇所(※)の「マテリアルの森」はSGEC森林認証を取得し、持続可能な森林経営を行なっていると国際的に認められています。
馬搬のメリットや可能性について、川合さんにお話を伺いました。
(※)道内9箇所のマテリアルの森:美唄、早来、手稲、西野、小樽、白老、今金、森、濁川
天売島で初めて目にした馬搬に
社有林への適正を強く感じました
西埜さんと初めて会ったのは、2018年の天売島です。
天売島の水源林を間伐により整備する「天売島応援プロジェクト」という取り組みに個人的に興味があって、森の間伐をするタイミングで天売島を訪れたときのことです。
間伐をした木材を森の外に運び出し、地域で有効活用することも一つのプロジェクトのテーマでしたが、重機による集材作業ではどうしても大きな集材路も作らなくてはならないですし、森の木を不要に傷つけてしまうこともある。
そのなかで集材の手段として用いられていた方法が馬搬でした。
天売島の森で木材を馬で運び出す様子を目の当たりにし、私はその時初めて馬搬というものを知りました。
昔は盛んだったが今は廃れてしまったという馬搬。実際に目の前で行われるその作業は、実に森に優しい。
ぜひ、うちの社有林でもやってみたい! そう強く思った私は、西埜さんに声をかけたのです。「私たちと一緒に、いい森づくりをしましょう!」
自然のサイクルを邪魔しない馬は
天然生林との相性抜群です
「マテリアルの森」では、森の立地や地形、木の成長力などにより、4つのエリアに区域を分ける「ゾーニング」で森林管理をしています。
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資源循環利用区域
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天然生林択伐利用区域
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水土・生態系保全区域
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保健文化利用区域
針葉樹などの人工林で持続的に木材を生産する「資源循環利用区域」、天然生林を計画的に間伐・収穫しながら森林機能を高め多様な広葉樹の森を持続的に存続させる「天然生林択伐利用区域」、水土保全や生物多様性の保全に重要な河畔林等を保全する「水土・生態系保全区域」、レクレーションや自然体験活動の場を提供する「保健文化利用区域」の4つです。
西埜さんと出会った2018年の冬に、早来山林の「天然生林択伐利用区域」での馬搬が実現しました。馬搬は、機械に比べると効率は落ちるので木材の生産量が勝負という現場にはあまり向きませんが、小回りが効いて森を傷つけないため、繊細な作業が必要な天然生林の整備にはぴったりです。
我々が目指す森づくり、特に天然生林では、自然の力を活用してなるべく植栽はせずに森を維持していくことが目標です。様々な種類の木が混在し、林床に落ちた種子が発芽して新しい木が育っていく。そして、成長の限界に達した木を択伐し木材資源として活用する。そのサイクルで天然生林が無理なく持続できると考えています。
その天然生林の整備を重機で行うと、重さで地面が締め固められてしまい、せっかく林床に種子が落ちても土が固くてなかなか発芽できない。発芽できないと新しい木が育たない、森が育たないのです。また、作業中に他の木を傷つけてしまうこともあります。
その点、馬は地面を締め固めることもなく、林床を痛めない。そして低木を傷つけずに作業ができるんです。
思った通り、「マテリアルの森」と馬搬は相性抜群でしたね。
「天然生林択伐利用区域」のほかにも、将来的に「天然生林択伐利用区域」に移行させていくために計画的に整備を進めている人工林もあり、その一部でも馬搬で整備をしています。
馬搬は私たちが目指す森づくりが叶う技術の1つです。
馬の可能性を模索しながら
いい森づくりをしていきたい
私たちが「マテリアルの森」づくりで力を注いでいる天然生林の維持には、馬搬の作業に可能性を見出していますが、作業だけではなく、現場に馬がいるという点にもメリットを感じています。
以前、敷地内に市民の森やキャンプ場を有する手稲山林の「保健文化利用区域」の森林整備も馬搬で行ったことがあるのですが、キレイな仕上がりはもちろんのこと、いつの間にか周りに人が集まっていたのです。
馬が作業しているとどこからともなく人が集まってきて、いつの間にか賑やかな地域交流になっている。これは重機ではありえない、馬だからこそできる人の輪だと実感しました。
そして馬は、馬搬による集材だけではなく、様々な可能性を秘めていると思います。
例えばですが、馬に山林の雑草を食べてもらうというもの可能性のひとつかもしれません。
というのも、天然生林の森づくりは、種子が落ちて実生から育っていけるかが非常に重要ですが、その支障になるのが笹。笹が密生していると暗くて発芽しても育っていけないですし、笹の根茎は厚いので、種子が土まで到達せずに発芽できないことがよくあるんです。
馬は笹を食べます。そこで、馬を一定期間放牧しておくことで、森にとってやっかいな笹を餌として食べてもらえたらと。これが実現できたら本当に助かりますね。
西埜さんと一緒に馬搬を活用していい森づくりを実現し、実績を積んでいくことで、他の林業事業体の方が馬搬に注目するかもしれない。
そして馬搬というものが当たり前のツールとして北海道および日本に再び普及していけば、山林にとっても良い結果がついてくるのではないでしょうか。
これからも西埜さんそして馬たちと様々な可能性を広げながら、いい森づくりを実現していきたいと思っています。
三菱マテリアル株式会社
プロフェッショナルCoE環境保全センター森林管理室
川合 英之さん
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